地下湿地定期便

地下や湿地の生物をただただ愛でる日記

何度目の正直?

2021/9/19

今日は、記載中のTrechiamaに最も近縁であると思われる某メクラチビゴミムシを採集しに行きました。ここもトウゲノと同様に昔から何度もチャレンジしては敗北を続けていた場所です。

そこで、今回は前の教訓に習って記載文をしっかり読むことにしました。

すると、本種は2県にまたがって生息するらしく、国土地理院の地形図から詳細な場所を予測することができました。

とりあえず峠を越えてF県側に行ってみます。

予測した場所にはかなり小規模な枯れ沢があり、薄い腐葉土層が局在していました。早速掘ってみると、ムナビロナガゴミムシPterostichus abaciformisやゴモクムシたちが出てきて一見良さげでしたが、結局ここからTrechiamaは採集できませんでした。

 

次に岐阜県側を攻めます。

しかし、水量が多すぎたり、腐葉土や粘土が少なすぎたりとあまり良い場所がありません。

ようやく微妙な沢を発見したので、岸に溜まっている堆積物を少しずつ掻きだしてみます。

すると見覚えのある虫が!

・禁禁禁禁禁

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専門家の方に記載していただいている、とある新種なのですが、まさかここから出てくるとは思ってもいませんでした!(追加標本として既に送付済です)

 

そんなこんなでヘッドライトの充電もそろそろ切れかけてきた時、ふと倒木が倒れまくっている峡谷を発見しました。

吸い込まれるように峡谷に降り、すぐさま掘り始めます。

粘土質で適度に石もありイイ感じです。

探し始めて5分ほど、手のひらサイズの手ごろな石を見つけてひっくり返します。すると空隙から赤い虫が!!!

・ヌクミメクラチビゴミムシTrechiama (Trechiamagrandicollis S. Uéno, 1980 

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やっと出ました!ようやくです!

個体数は少ないようで追加は採れませんでしたが、♂だったので満足です。

 

そして帰り際に山中で微妙な池を見つけ、網で岸の植物を掬ってみると…

・マルツヤマグソコガネAphodius (Sinodiapterna) troitzkyi Jacobson, [1898]

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体型が異常なまでに丸っこく、小楯板が異常にデカい!

正直言って現地では「マグソコガネだなあ…ずんぐりしててかわいいなあ…」くらいにしか思わなかったのですが、調べてみると生体写真がほとんど見当たらない珍しい種だったようです。嬉しい!

 

兎にも角にも論文に必要なTrechiama2種がそろいました。論文書きます!

 

参考文献

・Ueno, S.-I., 1980. The anophthalmic trichinae beetles of the group of Trechiama ohshimai. Bull. Natn. Sci. Mus., Tokyo, (A), 6: 195-274.