チビゴミウェーブ
2021/9/23
最近チビゴミウェーブに乗っているので、このまま採れるのでは?と思い、奥田(2014)で混生する場所が指摘されていた2種のTrechiamaを狙いました。
報文中に書かれていた内容に沿って登山道(?)を進んでいきますが、いまいち正確な場所が分かりません。そこで、諦めて違う道を車で進むことにしました。
すると、あまりコレといった場所も無いままに道が崩れていて通行止めになってしまいました。そのためUターンして引き返しながらいくつかの枯れ沢を探していきます。
数個目の沢に来た時、何やらチビゴミの雰囲気を感じたので少し本気を出して掘ってみました。しかし、やはり何も出ません。コムカデやハサミコムシは出てもゴミムシの類は全く出ないのです。
待っていた母にも急かされたので諦めて立ち去ろうとしました。しかしどうしても諦めきれず、最後の一掘りで思いっきりクワを振り下ろしてみました。
すると植物の根と石の隙間から赤い虫が!!!
・ヤツクサメクラチビゴミムシTrechiama (Trechiama) intermedius S. Uéno, 1980
残念ながら♀でしたが、チビゴミらしく真っ赤な体で美しい種です。
狙っていた種の片方を無事捕獲できました。
この勢いで、少し下流側にあった路傍の土砂崩れを崩してみます。
あああ!!!
・サカウチメクラチビゴミムシTrechiama (Trechiama) iwasakii S. Uéno, 1988
目的のもう片方も出てきました!
地下性傾向が前種より低く、痕跡眼が発達して体色も濃いですが、こちらもカッコいいです。
満足して帰路に着いたのですが、少し気になって、道中にある某Trechiama産地を訪ねました。
ここは母の日に母が偶然見つけたohshimai系Trechiamaの未記載地です。
追加を得たかったというのもありますが、無事な生息を確認したかったので立ち寄りました。
すると、前回あれだけいたチビゴミたちが全く採れません。どうしたことかと片っ端から石をひっくり返すと、やはりいました!
・Trechiama sp
しかし、心なしかどこか様子が違います。
交尾器を抜いてみると、その違和感の正体が分かりました。左が5月に採集した個体の交尾器、右が今回採集した個体の交尾器です(目盛: 0.25mm)。
なんと前回はohshimai系だったのが、今回はsuzukaensis系(又はnagahinis系?)に変化していたのです!
驚きました。メクラチビゴミムシは種分化が激しく属につき”1産地1種”が普通ですが、系統の違う2種が混生する例はいくつか知られるのです。しかしまさか私がその現場に居合わせるとは思いませんでした。
交尾器を見ると本種はヌクミに近そうな気もしますが、ヤツクサ感もあります。そのため種の同定は保留にしておきますが、2種が混生する貴重な記録となるでしょう。
上手く波に乗ることができ、目的の2種+αのチビゴミを採集することができました。これで岐阜県産Trechiama、8種中6種制覇です!複眼が発達しているオンタケナガチビゴミムシT. lewisiと、後々書きますが採集がほぼ不可能と思われるイブキメクラチビゴミムシT. spinosusを除けば全種コンプリートしたことになります!長い道のりでした、次は空白地帯を埋めるために頑張ります!とりあえずその一歩目として今書いている論文を書きあげます!
引用・参考文献
・Ueno, S.-I., 1980. The anophthalmic trichinae beetles of the group of Trechiama ohshimai. Bull. Natn. Sci. Mus., Tokyo, (A), 6: 195-274.
・Ueno, S.-I., 1988. Parapatric occurrence of anophyhalmic Trechiama (Coleoptera, Trechinae) in Central Japan. J. speleol. Soc. Japan, 13: 1-13.
・奥田好秀, 2014. 【短報】岐阜県西部におけるチビゴミムシの記録. さやばねニューシリーズ, 15: 44.