地下湿地定期便

地下や湿地の生物をただただ愛でる日記

水中に挑みし者

2021/3/20

 今日はお彼岸ということで県内の親戚の家を廻り、空いた半日でまたまた河川敷に行ってきました。目的は特に無く、キボシツブゲンゴロウやダルマガムシでも見られれば嬉しいなぁ、というゆるい感じで河原を歩きます。

 すると目の前を仕切りに何かが飛び交い、しまいには手に当たるものまで出てきました。飛ばさないように着地点にそっと近づくと…

・コニワハンミョウ Cicindela transbaicalica

f:id:KOPEMUSHI:20210323131358j:plain

河原の砂地に生息する美しいハンミョウです。ハンミョウは子供の頃から追いかけっこをする旧友なので、見かけると懐かしい気持ちになりますね。(この個体は体長が16mmもあって、同所的に生息するアイヌC. gemmata ainoを疑いましたが、紋様はコニワのそれに近いため今回の判断としました。)

 

 結局この河川敷では他にコモンシジミガムシが1匹見られたのみだったため、数百m離れた河川敷に移動することにしました。ここは小河川との合流点なので変わった生物も見られるのではないか、と期待して水底をガサガサすると、見慣れないハチが網に入っていました。溺れたのかな、と思って近づけてみると、背中に突き出た鋭い棘と腰のくびれ…

・ミズバチ属 Agriotypus sp 

ミヤマミズバチ Agriotypus silvestris

f:id:KOPEMUSHI:20210323131449j:plainf:id:KOPEMUSHI:20210323131532j:plain

これがミズバチか!スーパーかっこいい!

彼らのメスは川に入水してトビケラ類に寄生するそうですが、この川はかなりの流量がありますし、魚類からの捕食もあるので産卵するのも命懸けでしょう。

またミズバチ属には複数の種が属していて日本ではミズバチA. gracilisとミヤマミズバチA. silvestrisが生息し、両者は頭盾の形で区別できるようです( http://ci.nii.ac.jp/naid/110004022293 )。

→[訂正 4/1] 頭盾が丸みを帯びていることからミヤマミズバチA. silvestrisと同定しました。

 

 この河川も改修工事が進んでコンクリートで護岸されてしまった場所もありますが、このような貴重な生物たちが頑張って生き延びてくれることを願うばかりです。

 

参考資料

https://sites.google.com/site/ichneumonidjp/home/agriotypinae/agriotypus

・Konishi K & Aoyagi M, 1994, A new species of the genus Agriotypus (Hymenoptera, Ichneumonidae) from Japan

・「新訂 原色昆虫大図鑑II 甲虫編」, 北隆館, 2007