地下湿地定期便

地下や湿地の生物をただただ愛でる日記

啓蟄後の河川敷

 啓蟄が過ぎた一昨日、某川下流の河川敷の水辺を散策してきました。

 目的は様々ありましたが、主にセスジゲンゴロウ属とダルマガムシ科でした。

 堤防に沿って下流に近付くにつれて河川敷も広くなるのですが、草や木が密集していて川べりには近付けそうもありません。そこでそろそろ引き返して河岸を変えとした時、工事で平坦にされた部分にいくつかの小規模な湿地があるのが見えました。

「昨日の夜、雨降ってたし一時的なものかなぁ」

そう思いながらも気になって下りてみると、意外と深さもあってしっかりした湿地。

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 早速、金魚網でひと掬いすると、見慣れた小さなゲンゴロウの姿が…

・テラニシセスジゲンゴロウ Copelatus teranishii

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やったー!!!

もちろん普通種ではあるのですが美麗な種であることには変わりなく、いつ見ても癒されます。

 

 次に網に入ったのは大量の黒いゲンゴロウ

・ホソセスジゲンゴロウ Copelatus weymarni

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昔は網に入った本種を見て「なんて小さいのだろうか!」と思っていましたが、今では「こんなにデカかったっけ?」と思うようになりました。皆さんもご経験があるかもしれません。こちらもまたド普通種ですが、普通種が大量に生息する環境は素晴らしいです。

 

 お次はホソセスジゲンゴロウの影に隠れてうごめいていた丸いムシ…

・キイロヒラタガムシ Enochrus simulans

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これまた淡い色と丸っこい体が美しいガムシ。植物の上を歩く姿も可愛らしい。

 

 この3種だけかと思われましたが、何度も網を入れるうちに一匹だけ違う種が…

・チビヒラタガムシ Enochrus esuriens

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小さくてかわいい。(まだ雰囲気だけでウスイロツヤヒラタガムシA. ishiharaiと区別できていないので要精査。)

 

 そして、貝には詳しくない私ですが、その大きさで一目で分かった貝が…

・クルマヒラマキガイ Hippeutis cantori

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6mmという破格の大きさと、横から見た時に殻が台形であることが特徴の貝です。この種は環境省RDBで絶滅危惧II類とされていて、岐阜県では生息が確認されていません。某貝戦士にも訊ねてみたのですが、今のところ私の記録が県の初記録となりそうです。しかし県内の個体は帰化個体の可能性が高いらしく、要調査です。

 

 やはり岐阜県にはまだまだ貴重な環境が残っています。今のうちにその全貌を明らかにしておかなければなりません。

 

参考文献

・中島淳ほか,「ネイチャーガイド 日本の水生昆虫」, 文一総合出版, 2020