地下湿地定期便

地下や湿地の生物をただただ愛でる日記

海無し県民、海へ行く

2021/5/2

この日向かったのは、小さな頃から釣りによく来ていた三重県の某海岸です。津波対策で環境も大きく変わり続けていますが、なんとか保全されている場所も残っています。その中でも今回降りたのはこの砂浜です(場所が分かりにくいように撮りました)。

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小さな川の河口で、倒木や干潟も点在していて良い場所です。

早速倒木を持ち上げてみると、いましたいました。

・ヒラタキイロチビゴミムシTrechus ephippiatus

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海岸でよく見る有眼チビゴミムシです。海岸で上流から流されたメクラが見つかった記録もありますし、海ギリギリに生息する種もいるので一瞬ヒヤリとします。

 

次に現れたのはこちら

・イソカニムシGarypus japonicas

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カニムシも大きいとカッコイイですね!(もちろん小さくてもカッコイイですよ 汗)

 

続いて倒木の下からわらわらと出てきたのは

・クロキオビジョウカイモドキIntybia niponicus

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そこらへんで見られる奴らとは一線を画す芸術的なジョウカイモドキ。雄の触覚の一部が膨らむというのはツチハンミョウみたいで面白いです(ツチハンミョウは肥大部で雌の触角を掴みますが、ジョウカイモドキは何の意味があるんですかね…)。

 

そして出ました出ました、海岸と言えばコイツです

・オオヒョウタンゴミムシScarites sulcatus

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日本屈指の大型ゴミムシ!しかも大顎がカッコイイ!言うこと無しですね!

 

倒木を見終わり、干潟に行ってみると、カワニナが大量!

・フトヘナタリCerithidea (Cerithidea) rhizophorarum

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いえいえ、こちらカワニナの海バージョン、ウミニナの仲間です(bar:1cm)。私は貝に明るくはありませんが、こういった形には魅了されますね。ちなみにこのウミニナ科ですが、一種(ホソウミニナ)を除いて全てが環境省RDBに入っています。貝というとどこにでもしつこく出てくるイメージがありますが、移動の遅さと軟体ゆえ、水質汚染や埋め立てなどから逃げられないのでしょうね。こんなに美しい貝が絶滅する未来はいやだ!私はそう思います。

 

そんなこんなで帰り際に、干潟に生えていたアシを見てみると、小さなヒメテントウがいました。

・ヤマトヒメテントウScymnus (Neopullus) yamato

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私は最初クロヘリヒメテントウかと思ったのですが、Twitterで専門の方から本種だと教えてもらいました。毛の流れと交尾器の微妙な違いがポイントらしいですが、素人には全くです。

 

 

海無し県に住む私は、海に行けるだけで幸せなのですが、素晴らしい生き物たちを見せてくれて本当に楽しかったです。一方で色々な建て前でこのような海岸環境が壊されているのは事実です。実際に今回見ることができた種も多くが国または自治体のRDBに入っていました。知らず知らずに消えていく彼らのことを思うと微妙な気持ちになります…。

 

参考文献

・「改訂 原色昆虫大図鑑 II 甲虫編」, 北隆館, 2007

・三浦知之,「干潟の生きもの図鑑」, 南方新社, 2008

・阪本優介,「テントウムシハンドブック」, 文一総合出版, 2018