地下湿地定期便

地下や湿地の生物をただただ愛でる日記

化かされた…(2)

2021/8/29

どうも、最近ハエトリグモハンドブックを購入してハエトリ観察ツアーを行おうと考えながら毎回ゴミムシを探しているコぺムシです 笑

今日は、前回化かされた某Trechiamaを狙って某山に行ってきました。

実は前回の採集時にタイムカプセル(地中トラップ)を埋めてきたので、まずはそちらを掘り起こします。

結果は…

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大量のノミバエとアズマオオズアリの墓場と化していました…

これに意気消沈した私は、最後の悪あがきで、今まで探さなかった一見面白くなさそうな沢を登ってみました。

するとそこには、山道から見ると分からないような小規模な枯れ沢が合流していました。気力を振り絞ってツルハシを振り下ろします。

 

掘れば掘るほどトビムシやワラジムシなど餌になっているであろう生物が沢山でてきます。

これは期待できるぞ!

慎重に土を搔きわけます…

すると、見慣れた赤い虫が!!!

Trechiama sp

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今度こそ絶対にアイツだ!!!

…と現地で喜んだのですが、帰って撮影してみると、アイツにしては眼が薄い?

まさかと思いながら交尾器を抜いてみると…

お察しの通り、またまたohshimai系でした…

す、救いはないのですか(´;ω;`)

雲と海

2021/8/7

今回は特に目的は無く、ぶらぶらと出掛けてきました。

目的が無いのでとりあえず樹上をスイープしてみると、少し小さめのクモが糸を伸ばして降りてきました。正直、クモは苦手な部類に入るので少し身構えましたが、一目見てそれが“ヤツ”だと分かりました!焦る気持ちを抑えて網に入れます…やはりそうだ!

・キジロオヒキグモ Arachnura logio

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あああああああああああああああああ!やっと出会えたあああああ!!!

クモは門外漢なコぺムシですが、そんな私が憧れていた数少ないクモです!珍しいのはもちろんですが、異常に細長い体型、腹部上端のM字、頭胸部に生える上品な毛…どこを取っても最高に素晴らしい!

ちなみに私が見たいクモは他には、ワクドツキジグモ、カトウツケオグモ、サカグチトリノフンダマシ、ヤマシログモ、ヒトエグモです。いつか見れるといいなぁzzz

 

結局2時間ほどこの場所を楽しみ、移動途中に見つけた池に立ち寄ります。

急に現れたよく分からない池なのですが(数年前には無かったはず…)、どうやら現地の方によると、めちゃくちゃだった放棄水田を整備して、生物多様性を生み出すために作られた池らしいです。

中央部には背の高いイネ科植物が生えていて、その周りにはコカナダモ(?)とヒシが密集しています。

掬ってみると、カゲロウの幼虫、トンボのヤゴは多いですが、甲虫が全く入りません。しかし網の中をよく見ると、中型の巻貝が入っています。ヒメモノアラガイかと思ったのですが、かなり大きく、螺塔があまりにも小さいので違和感を感じました。もしかしてこれが…

・モノアラガイ Radix auricularia japonica

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これぞ無印モノアラガイ!いい顔してますねぇ。

(某貝戦士に確認してもらいましたが、Radixで間違いないとのことです。)

 

今回行った場所は正直言ってあまり昆虫的に面白い場所ではなかったですが、個人的に見たかった生き物を見ることができてよかったです。

The last teen day!

2021/7/4

今日はとあるガムシを某水昆戦士にお渡しするために某昆虫館に行ってきました。さすがスーパー戦士だけあって、素晴らしいお話を聞くことができ、有意義な時間になりました!

ついでに昆虫館を一通り見た後、まだまだ時間があったので近くの山へ。私の腕ではあまり昆虫は見つけられませんでしたが、帰り際に木の幹に何かが止まっているのが視界に映りました。モスキートな体型をしているが、異常にデカいし綺麗…これはまさか…

・トワダオオカToxorhynchites towadensis

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脚が長いので予想外に大きく見えて驚きました!聞くところによると、水が溜まっているところに産卵する性質を利用して本種を効率よく採集するタイヤトラップなるものがあるらしく、あまりにも本種と縁が無い私はこの奥の手を使おうと思っていましたが、今回それに頼ることなく拝むことができたので良かったです。

 

次はチビゴミを狙って某ダムに流れ込む沢に向かいました。降りてみると、少し有機質な感じはしますが脇は植物が茂り、良さそうな場所です。

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沢の中を歩いていると、茂みからアメンボが出てきて、私に驚いて騒ぎ始めました。アメンボに囲まれて楽しいなあと思っていると、アメンボの割にはとんでもないスピードで水面を滑る昆虫がいるようです。視界に入れるのも大変ですが、念のために持ってきていた網でエイヤッ!と勢いよく掬ってみます。するとそこには激しく跳ね回る甲虫の姿が!

オナガミズスマシOrectochilus regimbarti regimbarti

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こちらも初めて見ました!本家ミズスマシより大きくてシュッとしていてカッコいいです!しかし滑るスピードが半端じゃないですねぇ。小さな網では水の抵抗も相まって全く入りません。素晴らしい進化!そして絶対に普通種ではない!笑

 

もうチビゴミどころではなくなったのでついでに水中をのぞいていると、黒い物体が動いているではありませんか!見慣れぬ甲虫でしたが、頭にヌッと名前が浮かんできました!これは…

・クロサワドロムシNeoriohelmis kurosawai

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夏の名物ヒメドロらしいですが、私は初めて出会いました。デカくてカッコいいですね!そして流木を持ち上げたり網でガサガサせず、ルッキングでヒメドロを見つけたのは初めてです。

 

翌日が二十歳の誕生日という十代最後の採集でしたが、面白いものを沢山見ることができて大いに楽しめました。ただ、チビゴミが探せなかったのは心残りなのでまた行きたいです。

 

参考文献

・中島淳ほか,「ネイチャーガイド日本の水生昆虫」, 文一総合出版, 2020

丸消

2021/6/20

本日は三重県のとある池に行ってきました。というのも、実はここは昨年の晩秋にチュウブホソガムシを大量に観察している池であり、今回もその生息を確認したかったのと、夏特有の何かが出ていやしないかと期待していたためです。

早速到着して池を見渡すと、水草が前回より繁茂しています。水中を見ると、タヌキモ属の一種が目立っていました。皆さんもそうでしょうが、私もタヌキモの捕虫嚢が大好きです 笑

そして秋には遠すぎてヒシかなぁとしか思わなかった浮葉の正体がジュンサイであることが分かって嬉しかったです。

ようやく水生昆虫の採集です。とりあえず網を入れてみると、早速コツブゲンゴロウやマツモムシ、ホトケドジョウなどが網に入ります。しかし何回掬ってもホソガムシは見えないので、前回と同様に堆積した枯草を何度かふみふみしてかき混ぜてみます。

すぐさま網に力を入れてガサガサします。顔を網に限界まで近づけて虱潰しに見ていると、動きはないけれど丸っこい甲虫が入っていました。ん?んんんんん!!!

・マルケシゲンゴロウHydrovatus sp

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マルケシだぁぁぁぁぁぁ!!!かわいいぃぃぃぃぃぃ!!!

図鑑を見ながらずっと憧れていたゲンゴロウです!体型はもちろんですが、動きが緩くて最高にかわいいです!

(個人的にはコマルケシだと思ったのですが、某水昆戦士に見ていただいたところ未記載種の可能性もあるとのことで、sp止めにしておきます。)

 

そんなこんなで満足したため、ついでに近くの池に立ち寄りました。ここは前回ミズスマシが1匹だけ見られた場所であり、安定して生息しているのか気になっていたのです。早速覗いてみると、夢に見た光景が広がっていました!

・ミズスマシGyrinus japonicus

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大量のミズスマシがせわしなく水面を滑っているではありませんか!しかもその下はイトモの楽園で無印ガムシの幼虫が泳いでおり、これぞ私の思い描いていた最高の池です!

 

 

今日は素晴らしすぎる湿地を周ってきましたが、この地域にはまだまだ良い自然が沢山残されているので、今後も楽しませてもらおうと思います。

 

参考文献

・中島淳ほか,「ネイチャーガイド日本の水生昆虫」, 文一総合出版, 2020

こ、このガムシは…!?

2021/6/19

今日は暴風雨でしたが、せっかくの休みに採集できないのも嫌なので、ずぶ濡れ覚悟で近所の河川敷に行ってきました。

河川敷の中央に池があって、前から堤防を通り過ぎる度に気になっていた場所です。

早速水溜まりをガサガサしてみると、黒い甲虫が沢山入りました。こ、これは!

・×××××

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属レベルで初採集です!まあ種はアレだろうなぁと思いながら、まさかと思って交尾器を抜いてみると、岐阜県では記録の無いとある種でした!!!とりあえず報文を投稿したので名前は伏せておきます。分かる人には分かってしまうかもしれませんが…笑

 

そして同じ網の中に入っていたカタビロアメンボっぽいカメムシが気になったので、雨も強くなったところで家に帰って撮影してみました。すると…

・フタイロコバネケシミズカメムシ Hebrus ruficeps

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ワタクシ水昆素人はカタビロアメンボにしては何かがおかしいと思っていたのですが、Twitterで最強水昆戦士に種名を教えてもらいました。ケシミズカメムシは盲点でした。こちらも県初記録説が浮上したのですが、どうやら既に記録があるようです。ともあれ初見の種が採れて良かったです。

 

この川の河川敷は面白い池沼も多いので、これからも注目していこうと思います。

 

 

参考文献

・中島淳ほか,「ネイチャーガイド日本の水生昆虫」, 文一総合出版, 2020

化かされた…

2021/5/15

とある山の通行止めがようやく解除されたため、論文に必要な某Trechiama(nagahinis種群)を狙ってきました。

とりあえず一本目の沢に到着。沢を上がろうとすると、手元の草にヨモギハムシ似のハムシがわちゃわちゃしているのが見えましたが、ヨモギにしては丸っこいので家に帰って調べてみると…

・アカソハムシSuinzona cyrtonoides

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初めて聞いたハムシ!なかなかかわいい。最近の論文で属が移行されたらしいです(Cho,HW., Kim, S.K. 2021)。

 

結局ここでは目立った生物は見られず、思い切って頂上のタイプ沢に移動。まず降り積もった落ち葉を掻きわけていると、不思議な生き物が出てきました…こ、これは!

・トワダカワゲラ属Scopura sp

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カワゲラの中で最も見たかった属なので叫びました、これは万国共通のカッコよさ!種の同定については幼虫の場合、雄の肛上板の形を見なければならないようですが、分布から見てミネトワダカワゲラS. montanaでしょう。実は個人的に、カワゲラは幼虫に良さが詰まっていると思っていますが、トワダカワゲラの場合、成虫になっても殆ど形が変わらないのも推しポイントです!

 

落ち葉を除け終わったところで、さっそく掘っていきます。すると、見慣れた赤い虫が走り出しました!少し手間取りましたが何とか回収。すると間髪入れず視界に赤い虫が入ったのでこれまた何とか回収。これは紛れもなく…

Trechiama sp

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これでやっと論文が書けるゼ!…と思ってTwitterにもそう載せたのですが、実は!この後検鏡してみると、交尾器が…

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ということで、まさかのohshimai種群でした( ノД`)シクシク…しかも雰囲気的にまさかのネオ(T. glacilior)!?

本当になんでネオってこんなに分布広いんでしょうね 泣

ただ、逆にここで採れた記録はいつか興味深い記録に変身するかもしれません、そう思いたいです。

 

結局、論文に必要なブツは採れませんでしたが、現在タイムカプセル(別名地中トラップ)を埋めているので様子見します。

 

参考文献

・「改訂 原色昆虫大図鑑 II 甲虫編」, 北隆館, 2007

・丸山博紀・高井幹夫「原色川虫図鑑 幼虫編」, 全国農村教育協会, 2016

海無し県民、海へ行く

2021/5/2

この日向かったのは、小さな頃から釣りによく来ていた三重県の某海岸です。津波対策で環境も大きく変わり続けていますが、なんとか保全されている場所も残っています。その中でも今回降りたのはこの砂浜です(場所が分かりにくいように撮りました)。

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小さな川の河口で、倒木や干潟も点在していて良い場所です。

早速倒木を持ち上げてみると、いましたいました。

・ヒラタキイロチビゴミムシTrechus ephippiatus

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海岸でよく見る有眼チビゴミムシです。海岸で上流から流されたメクラが見つかった記録もありますし、海ギリギリに生息する種もいるので一瞬ヒヤリとします。

 

次に現れたのはこちら

・イソカニムシGarypus japonicas

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カニムシも大きいとカッコイイですね!(もちろん小さくてもカッコイイですよ 汗)

 

続いて倒木の下からわらわらと出てきたのは

・クロキオビジョウカイモドキIntybia niponicus

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そこらへんで見られる奴らとは一線を画す芸術的なジョウカイモドキ。雄の触覚の一部が膨らむというのはツチハンミョウみたいで面白いです(ツチハンミョウは肥大部で雌の触角を掴みますが、ジョウカイモドキは何の意味があるんですかね…)。

 

そして出ました出ました、海岸と言えばコイツです

・オオヒョウタンゴミムシScarites sulcatus

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日本屈指の大型ゴミムシ!しかも大顎がカッコイイ!言うこと無しですね!

 

倒木を見終わり、干潟に行ってみると、カワニナが大量!

・フトヘナタリCerithidea (Cerithidea) rhizophorarum

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いえいえ、こちらカワニナの海バージョン、ウミニナの仲間です(bar:1cm)。私は貝に明るくはありませんが、こういった形には魅了されますね。ちなみにこのウミニナ科ですが、一種(ホソウミニナ)を除いて全てが環境省RDBに入っています。貝というとどこにでもしつこく出てくるイメージがありますが、移動の遅さと軟体ゆえ、水質汚染や埋め立てなどから逃げられないのでしょうね。こんなに美しい貝が絶滅する未来はいやだ!私はそう思います。

 

そんなこんなで帰り際に、干潟に生えていたアシを見てみると、小さなヒメテントウがいました。

・ヤマトヒメテントウScymnus (Neopullus) yamato

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私は最初クロヘリヒメテントウかと思ったのですが、Twitterで専門の方から本種だと教えてもらいました。毛の流れと交尾器の微妙な違いがポイントらしいですが、素人には全くです。

 

 

海無し県に住む私は、海に行けるだけで幸せなのですが、素晴らしい生き物たちを見せてくれて本当に楽しかったです。一方で色々な建て前でこのような海岸環境が壊されているのは事実です。実際に今回見ることができた種も多くが国または自治体のRDBに入っていました。知らず知らずに消えていく彼らのことを思うと微妙な気持ちになります…。

 

参考文献

・「改訂 原色昆虫大図鑑 II 甲虫編」, 北隆館, 2007

・三浦知之,「干潟の生きもの図鑑」, 南方新社, 2008

・阪本優介,「テントウムシハンドブック」, 文一総合出版, 2018